ハリウッドは苦手だが、インディペンデント映画はアメリカでも肌が合う。退廃的な風景とそこに暮らす自堕落な人々のどこにも行けないロードムービー。ストーリーも国も違うが「夜空に星のあるように」にとても似ている。ワンダのような人は男女問わず必ずおり、どうしようもない人間だが憎めない。野良犬が出てくるシーンがあるが、ワンダもデイブも同じようなものだ。上手く生きるには頭が足りない。疎外されていても一人孤独は嫌だ、誰かのぬくもりが必要だ。監督のバーバラ・ローデンはエリア・カザンという有名な監督の妻で多才な人だったらしいが、こういう映画を自ら主演で作るというのは自身のルーツが貧しく辛いものだったからだろうか。この作品の10年後に一作も映画を制作する事無く若くして他界してしまった。まるで映画の中のワンダのように薄幸さを感じさせる。実際の事件をヒントに作られたそうだが、誰も賛同してくれず、ワンダのような女性に注目もしてくれないので、自分で準備をし低予算で作られたそうだが、16ミリのザラつきや素人役者の味が出ている。退屈しないエンタメ映画ではないが、とても余韻が残る、特にラストが素晴らしい、観ておいて本当によかった。
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