マケドニアを舞台に、ギリシャ正教徒とアルバニア系ムスリム人住民のあいだで高まる緊張を、マケドニアとロンドンを結び、時間軸が複雑に交錯する三つの挿話で描きだすドラマ。監督・脚本のミルチョ・マンチェフスキーはマケドニア出身で、ニューヨークを拠点にミュージック・ビデオやCMを手掛け、これが初の劇場用長編映画になる。製作はジュディ・コウニハン、チェドミール・コラール、サム・テイラー。撮影は「野性の夜に」のマニュエル・テラン、音楽はエスニック音楽グループのアナスタシア。出演は旧ユーゴ出身の国際的名優レード・セルベッジア、「オリヴィエ・オリヴィエ」のグレゴワール・コラン、「ネイキッド」のカトリン・カートリッジ、ほか。94年ヴェネチア映画祭金獅子賞(グランプリ)受賞。96年度キネマ旬報外国映画ベストテン弟9位。
1996年製作/115分/イギリス・フランス・マケドニア合作
原題:Before the Rain
配給:大映
劇場公開日:1996年2月3日
ストーリー
【第一話・言葉】マケドニアの僧院の修道士キリル(グレゴワール・コラン)はこの2年来沈黙の修行をしている。その彼の部屋にある晩、ムスリム教徒の娘ザミラ(ラビナ・ミテフスカ)が逃げ込んで来た。キリルは上司に報告しようとも思うが、彼女を哀れに思い、また沈黙の行ゆえに話す義務もないことから彼女をかくまう。翌日、マケドニア人の民兵集団が来て強引に僧院を捜索する。彼女はキリスト教徒を殺して逃げてきたらしい。だが彼女はどこにもいない様子で、民兵たちは僧院に泊り込む。夜中にザミラが戻ってきた。他の修道士たちも彼女の存在を知り、キリルを破門したことにして彼女を守って逃げさせる。翌朝、二人が無事に逃れられたと思い、キリルがこれからロンドンにいる写真家の叔父の所に逃れようと言ったとき、ザミラの祖父たちムスリム民兵が現れ、キリスト教徒であるキリルを殺そうとする。ザミラは彼を守るために愛し合う仲だという。キリルは釈放されるが、後を追おうとしたザミラはその兄に射殺される。